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技能実習制度から変わる「育成就労制度」とは?概要を掴んでおきましょう

3月15日、「育成就労制度」を柱とする出入国管理法等の改正案が閣議決定

「実態に見合っていないのでは」等々、国内外から様々な指摘が為されてきた、これまでの「技能実習制度」。そのような中、実態を踏まえつつ、かつ、更にこれからの日本にとって適したシステムの再構築を、ということで、技能実習制度を廃止する形で新たに「育成就労制度」が新設される見込み(現時点)となりました。

これらの内容を柱とした出入国管理法などの改正案が15日に閣議決定され、いよいよ施行が目前と迫る中、今までの「技能実習制度」と新たな「育成就労制度」では、何が、どう変わるのか?今回はそちらの概要について確認してまいりたいと思います。




「技能実習制度」と「育成就労制度」大きな違いとは?

では、早速、内容を確認してまいりましょう。今回は特におさえておくべき5つの視点から違いを確認してまいります。

先ずは技能実習制度(以下、旧制度という)と育成就労制度(以下、新制度という)の位置づけの違いについてです(特に重要と思われる箇所は太字としています)。

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1. 位置付け

旧制度
・国際貢献の目的で、開発途上国などの外国人を受け入れ実務を通じてそれぞれの業種の技能を移転する
・技能実習での受け入れは最長5年間に限る。

新制度
人材確保と人材育成を目的とする
・基本的に3年の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成

※ 現行の企業単独型技能実習のうち、新制度の趣旨・目的に沿わないものは、新制度とは別の枠組みでの受入れを検討。

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「(技能移転による)国際貢献」が大義であった旧制度に対し、新制度では日本の未来に向けた「人材確保と人材育成」である、ということが明確にうたわれている点が今回の最大の違いだと言えるでしょう。また、育成就労制度はあくまで「前工程」であり、最終的には次ステップである「特定技能」へ集約させていく、という点も踏まえておく必要があろうかと思われます。

では、続いての視点、「転籍・転職について」です。

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2. 転籍・転職について

旧制度
・原則認められない

新制度
やむを得ない場合の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化
一定の条件下で、本人の意向による転籍が可能になる

【本人の移行による転籍に必要な条件】
1. 同一の機関において就労した期間(1年〜2年)を超えている。
2. 技能検定試験基礎級等・一定水準以上の日本語能力に係る試験(日本語能力A1相当の水準から、特定技能1号移行時に必要となる日本語能力水準までの範囲内を想定)に合格
3. 転籍先が、適切であると認められる一定の要件を満たしている。

それに伴い、
・転籍前企業の特定技能受入れ初期費用負担を考慮し、不平等が生じないための措置を講じる
・監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認めない。

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旧制度での「転籍不可」から一変し、新制度においては様々な条件は付されるものの、「転籍可」となったことは大きな変更点でしょう。あとは、具体的にどのような運用となってくるのか?「転籍前企業の特定技能受入れ初期費用負担を考慮し、不平等が生じないための措置を講じる」等々、今後の具体的かつ詳細の情報を待ちたいところです。

続いて3点目の視点、「監理・支援・保護のあり方」についてです。

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3. 監理・支援・保護のあり方

旧制度
・各管理団体、技能実習機構、登録支援機関において、質や支援の体制にばらつきがあり、不十分な面がある。

新制度
監理支援機関・登録支援機関
・独立性・中立性を保つため、監理団体(監理支援機関)について、受入機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限、外部監査人の設置の義務化
特定技能外国人の支援業務の委託先を登録支援機関に限定する

送出機関
・二国間取決め(MOC)を新たに作成し、MOC作成国からのみ受け入れる
手数料等の情報の透明性を高めるとともに、受入機関と外国人が適切に分担するための仕組みを導入し、外国人の負担軽減を図る

外国人育成就労機構
外国人技能実習機構を外国人育成就労機構に改組、特定技能外国人への相談援助業務も行わせるとともに、監督指導機能や支援・保護機能を強化

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国外の送り出し機関や国内の管理支援団体等において、かなりの質的バラツキが散見された旧制度。新制度下においては、それらの品質維持機能の強化が講じられると共に、優良な管理団体、受入機関がより多くのメリットを享受できるような新たなスキームも検討されるとのことで、こちらも詳細の情報を待ちたいところです。

続いて4番目の視点、「特定技能制度への移行について」です。

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4. 特定技能制度への移行について

旧制度
・特定技能1号への移行は、以下を条件とする
1. 技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性があること
2. 特定技能1号試験+日本語N4
または
3. 技能検定3級等に受かっていること

新制度
・特定技能1号への移行は、以下を条件とする
1. 技能検定3級等又は特定技能1号評価試験合格
2. 日本語能力A2相当以上のレベル(日本語能力試験N4合格など)
※当分の間は相当講習受講も可

試験が不合格となった場合、再受験のために最長1年間在留継続できる
支援業務の委託先は登録支援機関に限定、登録支援機関の登録要件や支援業務委託の要件が厳格化される

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新制度においては「不合格の場合も再受験のための在留継続が許される」ことが大きなポイントかと思われます。また、登録支援機関への要件が厳格化されると共に、支援実績や委託費等の開示が義務付けられることや、キャリア形成の支援も実施、となるようです。これらの実行により、「質の高い登録支援機関」と「そうでない機関」の優劣がより鮮明になることは間違いないでしょう。

最後に5番目の視点、「日本語能力の向上対策」についてです。

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5. 日本語能力の向上対策

旧制度
・本人の能力や教育水準の定めはない

新制度
就労開始前:
日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格または相当する日本語講習を認定日本語教育機関等において受講することが求められる。
・また、受入機関は1年経過時までに同試験および技能検定試験基礎級等を受験させること。

特定技能1号移行時:
・技能検定試験3級または特定技能1号評価試験合格
・日本語能力A2(N4)合格

特定技能2号移行時:
・特定技能2号評価試験合格/日本語能力B1相当の以上の試験(N3)合格
受入機関が積極的に日本語教育に取り組むためのインセンティブを設ける

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優良受入機関の認定要件に日本語教育支援の取り組みが入ってくる等、日本語教育への比重がより重くなることが大きなポイントではないでしょうか。加えて、入国後も継続的に日本語能力を高め続ける支援を行う等、受入機関側に求められる要件についても今後、注意を払う必要があるでしょう。




興味・関心をお持ちの皆様は、未来を見据えて早めの準備を

以上、旧制度(技能実習制度)と新制度(育成就労制度)との比較の中、特に事業者としておさえておくべき変更点について、抜粋してお伝えさせていただきました。

介護福祉業界において基盤とも言える「人財」の確保が今後、さらに厳しくなるであろう中、国内在住のメンバーのみならず、いわゆる「グローバルメンバー」の採用についてもそろそろ真剣に取り組まなければ、とお考えの方も少なからずいらっしゃるかもしれません。

そのような皆様にとって今回の制度変更というタイミングは一つの「好機」かもしれず、今後、更に多くの事業者が本領域の取り組みを加速し始めることは容易に想像できるところです。その意味でも関心をお持ちの皆様は更に詳細の情報を確認しつつ、早め・早めの準備を具体的に進めておいた方が宜しいのではないか、と思う次第です。

我々としても今後、本領域について有益な情報が入手出来次第、発信を行ってまいります。




【引用元サイトのURLはこちら】
https://www.smilevisa.jp/owned-media/ginojisyu_newsystem/

【参考サイトのURLはこちら】
1)「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」最終報告書(概要)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407012.pdf

2)「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」最終報告書
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407013.pdf





(2024-03-27)

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